大阪公立大学大学院医学研究科脳神経学教授伊藤義彰教授にクリニック前ホールにお越し いただき「脳卒中の治療の現状と課題~急性期から回復期への移行について~」と題した ご講演を頂きました
今回は、協和キリン株式会社様のご協力により、大阪公立大学大学院医学研究科脳神経内科学教授の伊藤義彰教授にお越しいただきました。フロアには当院と連携しながら脳卒中患者様を支えて頂いている訪問看護師さんや、リハビリ療法士さん、ケアマネージャーさんだけでなく施設管理者の方や介護職の方もたくさん集まって下さいました。
伊藤先生は日本脳卒中学会の理事などを務められる脳卒中のエキスパートの先生です。講演の内容は脳卒中治療ガイドラインに沿った超急性期の加療から2次(再発)予防の重要性の話まで非常にわかりやすいものであっという間の1時間でした。脳卒中急性期はできるだけ早期に適切な治療をうけることが大切であり、麻痺などが出現した場合の早期の救急要請がいかに重要であるかをたくさんのデータとともに提示していただきました。
脳卒中と神経変性疾患では患者数が違うので、当院のように神経難病、神経変性疾患の専門性をうたっても、現在診させていただいている在宅、施設患者様の約3割は脳卒中を患われています。より身近なトピックであったこともあり、皆さん非常に熱心に聞いておられました。私も神経内科専門医として、変性疾患だけではなく、脳卒中治療の知識の研鑽を怠ってはならないと改めて実感しました。
さて、ここからは、少し話がそれますがご容赦ください。
パーキンソン病患者様を中心に診療をしている私から、脳卒中の麻痺の話を頂いたので、少しパーキンソン病の話をさせていただきたいと思います。
1817年、英国のジェームズ・パーキン先生は、手足の震え、歩きにくさを持たれている患者様を「振戦麻痺」と名付け、世界に発表しました。その後、ノーベル賞受賞者を含むたくさんの著名な神経学の先生が研究に研究を重ね、パーキン先生の振戦麻痺は「脳卒中による麻痺」とは違うものであることを明らかにしました。1960年代にはパーキンソン患者様の脳内でドパミンが低下していること、現在パーキンソン病治療の主軸となっているレボドパ治療の有用性が初めて証明され、パーキンソン治療への道が大きく開けました。そして今、パーキンソン病治療はiPS細胞を用いた治療の研究も始まり、根治的治療も夢で
はなくなってきております。
今回の伊藤先生のお話を伺い、脳神経学は確実に、そして加速度的に進歩していっている
ことを強く実感しました。